大学2年生の夏、私は失恋をしました。
 数日間食べ物が喉を通らなくなるほど、自分の根幹を殴り飛ばされ、生きている感覚がなくなったような衝撃でした。

 原因は彼との
ミスコミュニケーション。私はある友人のことがどうにも好きになれず、時折彼の前でその不満や批判を口にしていたのですが、彼にとってそれは好ましいことではありませんでした。彼は私に、友人の不満を口にするのをやめるよう数度伝えたそうですが、私は彼の言葉を受け止めていませんでした。結果、彼の中で私への愛情や愛着がうすれ、ある日唐突に別れを告げられました。

 ショックでした。自分が彼の恋人であれないこともとても悲しかったですが、
その前に、
<大好きな人の気持ちに気づけなかった自分>に失望し、怒(いか)りました。

 失恋の体験から私は、<
相手が感じていること、内側にあることは、言葉で聴かないと分からない。逆に、自分のことも、自分が伝えたいように相手に伝わるように、言葉を的確に選んで伝える必要がある。>そう学びました。

 それからの私は、目の前の人が言葉にすることを注意深く聴き、自分の理解があいまいなことに関しては確認したり、一つ一つの会話において相手が求めていることを推し量りながら応答したりするようになりました。日頃会話する友人には、
「自分の聴き方や話し方を改善したいので、私の言動で不快になった時には、遠慮無く言ってほしい。」と依頼をしました。人との会話以外にも、物事に関して哲学することが
増えました。今思えばこの時期、私のコミュニケーションの在り方は変化しました。大学3年生の秋が近づいた頃。
ふと気づいて「就職活動の時期だなぁ」と思った次の瞬間、「あれ、
私って就職活動するのか?」という疑問が湧きました。

 就職活動って、就職する人がするものだよね。 

 ちょっと待て、はたらき方って世の中に(多分)いろいろある。会社じゃなくても、ボランティアをやって生きるとか、警察とか消防士とか主婦とか…よく知らないけどとにかくいろいろある。就職活動って、いろいろあるはたらき方の中で「会社」ってカテゴリーを選んだ人が、具体的にどの会社に勤めるかを探して見つけるためにやるものだよね。 

 
……私、就職したいのか?

 謎。というかはっきり言って「仕事したい」って気持ちは無い。だって
やりたいことなんてないし、今までだって「これになりたい」って本気で思った職業は無いし、バイトだってお皿を早く片づけたり売上の計算したりするのは好きじゃなくてお客さんと話すのが好きなだけで(当時喫茶店でウェイトレスのアルバイトをしていました)、仕事は好きじゃない。…うん、私、仕事したいとは思ってない。

 さてどうする私。自分が「はたらきたい」と思っていないことは確認できたが、就職活動の時期はじきに来る。数日かもう少し考えた末、「仕事したいとは思ってないけど、まぁ時期は限られてるし、ひとまず自分がはたらきたいと思う場所か この人たちと一緒に仕事したいと思う人たちに出会うために就活してみるか」と決めました。


 とは言うものの、興味惹かれる分野は限られました。リクルートサイトを眺めていて「おっ」と惹かれるのは、人を扱う分野。主に人材派遣・人材紹介・コンサルティング関連の会社に訪れました。
今の自分からみて、この自分はとてももったいなかった。様々な企業の中に入り込んで触れられるチャンスにも関わらず、チャンスと気づけず自分の興味で行動範囲を狭めていました。

 就職活動をすすめる中。私は、周りの学生の様子が目に留まることが多々ありました。違和感をもつのです。みんな、そのまんま自分のことを話したらそのまんま良さが伝わるだろうに、「そのまんま」しゃべらない。

緊張するとしゃべれない。
用意した文章をしゃべってる。聴いていて「しゃべってる」感じがしない。
面接官の質問を聴き取れない。ずれたことを回答する。
面接官のした質問に対して、<自分が用意しておいた、一番近い文章>
をしゃべる。そして質問の的は射ていない。
自分の回答に面接官が「ん?」といぶかしげにしても、そのことに気づけない。
周りの学生に勝とうとしているのが感じられて、その人本来のよさや人柄が感じられない。
面接官は、これから共にはたらくかを検討する
対等な関係のはずなのだけれど、そうだと思えずに、
「なんとか説得しよう」「なんとか立派に見せよう」として
かえって鎧を着てしまう。そして人柄が感じられない。
何が事実で何が事実でないのかを聞き分けられない。噂も真実だと認識する。


こんなことを目にしました。決して周りの学生を無能だとしているのじゃなくて、純粋に「よさや人柄が伝わらなくてもったいない」と感じたのです。他方自分はといえば、「内定とらなきゃ」とは思っていなかったからか、自然体で就職活動に取り組んでいました。全体の調和をとろうとして制限時間を意識できなかったり、自分の伝えたいことを言葉にできずに苦戦したりしても、1つ1つの会話を大切にしました。
今でも当時に出会った企業の方と時折連絡をとるほど、関係をつくっていました。

 就職活動の時期も後半にさしかかったあたり。「学生のこのコミュニケーション、何かできないかなぁ」という思いは強まるばかりでした。
 どうしてこういうことが起こるんだろう、しばらくの期間考えた結果。
「私たちは今まで、幼稚園・小学校・中学校と教育を受ける中で、算数は社会はやっても
コミュニケーションについては学んでこなかった。自分が本当に相手のことを聴けてるのかとか、自分の伝え方が相手にどんな風に伝わっているのかって、みんな学んでこなかったじゃん。コミュニケーションを訓練することが必要なんだ」という答えに行き着きました。
 そのことに気づいてからは「コミュニケーションのトレーニングを提供している会社」を探したのですが、見つけた中ではピッタリあてはまる企業が無く。当時の私は「会社内に新規事業を立ち上げる」とか「自分でつくったプログラムを会社として提供する」ことができると知らなかったため、行き詰まり、ある日「
会社でできないなら
自分でやればいいんだ!
」という決断に至りました。今でも、そう思いついた時に目を向けたキャンパスの上の青い空を思い出せます。(笑)

 自分でやる。そう決めたら、せっかく進んでいる面接も自分にとって
無駄な時間に見えました。だって行っても就職しないもん。
相手の人にとっても、就職するつもりが無いのに面接しに行くなんて失礼だ。
そうだ、やめよう。そう思って、2次面接・3次面接に進む予定だったのを
すべて取り消しました。そこから私のチャレンジがはじまりました。

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